夢をかなえた小学生の作文
『夢はかなう』

大分県南端小 六年 Y・Mさん(女性)


 「ミュージカルかぁ、なんか楽しそう」

学校からもらったミュージカル=オーディションの案
内状には、ちょっと興味があった。今まで見たミュー
ジカルの舞台を思い浮かべてみる。歌がうまく、もち
ろんダンスもうまく、その上セリフも上手に言える女
優さんがそこにいた。

 「やっぱり、私には無理か。」
あきらめようかなと思ったけど、何となくうつうつと
して、その気持ちをそのままお母さんに伝えた。お母
さんは、
「いいんじゃない?オーディションを受けるのもいい
 経験や。」
といつもの笑顔で答えてくれた。私は、
 「そうか、受けるだけでもいいよね。」
と心が軽くなり、応ぼすることにした。

 学校の行き帰り、みんなから、
 「オーディション、受けるんやろ。」
と言われた。言われる度に、
 「うん、でもどうせ落ちるわ。いいんや。」
と答えた。私には、才能はない。みんなと比べていい
とこなんかないんだから。心の中でそう思いながら……。

 そんなある日、学校に本を紹介する人が来るという
話を聞いた。何でも東京からみえるらしい。けっこう
有名人なのかなと思うとドキドキした。

 その人は、ギンギラギンの衣装で私たちの前に現わ
れた。その名も「団長」。自ら、本も書いている。彼が
登場した時、私はいすから転げ落ちそうになった。サー
カスに出てくる人の様な、山高ぼうに、黒いサングラ
ス。団長さんは、読み聞かせをしてくださった後、私
の心の中をのぞいたかのように、次のような話をして
くれた。

彼は、ロックバンドのリーダーもしていて、そのバ
ンドを途中で止めようかと考えていた時、バンドの仲
間から、
 「あきらめたら、何もできん。『ダメや、おれダメなん
 や』と思ったら本当にダメになるで。」
と言われて、夢をあきらめようと思いとどまったこと。
そしてまた夢を追い続けたことを団長さんは、話して
くれた。そして私たちに、

 「君たちの人生にもつらい時があるかもしれん、あき
 らめたくなる時があるかもしれん。だけど、それを
 乗りこえてこそ、何かいいもんができるんよ。今し
 ていることを精一ぱいやったら、絶対いい結果が出
 るよ。自分は、できると思えば、本当にできるんよ。
 君らの夢は必ずかなう。」

と言われた。その話を聞いた時、私の中にいるもうひ
とりの私の声を聞いた気がした。

「オーディションに受かりたい。」
と言っている私の声を。

 この時から、私は、
「オーディションに受かりたいこ
と声に出して言うようになった。そして、自分が今で
きることをやってみようと思った。

 歌が苦手だったので、担任の先生に教わった。中休
みや昼休み、音楽室で練習した。正直に言えばみんな
と遊びたかったけれど、団長さんが言った言葉を思い
出して、何回もオーディションの歌を練習した。そん
な私を見て友だちが、
 「すごくがんばっちょんな。」
と言ってくれて、その言葉もはげみとなった。

 お父さんや、お母さん、姉も練習に付き合ってくれ
て、オーディションの時に歌う歌は、家族みんなが覚
えてしまった。

 いよいよオーディション当日。今までにないきんちょ
う感だったのでかえって冷静になれた気がする。今ま
でのことをずっと思い出した。団長さんの言葉、先生
の言葉、友だちや、家族のはげましの言葉……。自分
の番になった時、今まで習ったことを全部出し切って
歌った。

 合格者発表。私の受験番号を呼ばれた時の感げきは
今も忘れない。あの時
 「どうせ落ちるわ。」
と思い続けていたら、きっとオーディションには、合
格できずミュージカルには出られなかったと思う。団
長さんが言った「できると思えばできる」は本当だっ
た。

 ミュージカルに出てよかったこと―友だちが増え
た、声がでるようになった、ダンスがうまくなった、
そしてなにより厳しさの後にうれしさがあることを知っ
たこと。全ては、あの、ミュージカルから始まった。

 思い続ければ、夢は必ずかなう。団長さん、先生、
家族のみんな、南端の友だち、本当にありがとう。


(大分県日出町 2007年度・作文集より)